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16歳で初めての体験

「モンテネグロの木の下で」で、モンテネグロの男性のものぐさをお話しましたが、今日はまたまたこんなモンテネグロのお話。

その一家には4人の娘がいました。そしてついに、待望の男の赤ちゃんが生まれました。
モンテネグロでは、長男が生まれると、空砲を空に向けて放し、村をあげて祝います。
この一家も母親やおばあちゃん、そして4人姉妹のみんなで、
初めての男の子を大切に大切に育てました。

1年が過ぎ、そして、2年が過ぎました。
でも、なぜか、男の子はいつまでたっても一言も言葉を話しませんでした。
初めての男の子が話せないとなると、家の女たちはそれまで以上に、
彼の世話を焼くようになりました。

そして、3年が過ぎましたが、それでも男の子が言葉を発することはなく、
すっかり失望した一家は、彼は話せないのだとあきらめ、
身の回りのことをそれまで以上に尽くしてあげました。

そして、月日はすぎゆき、あっという間に16年が過ぎました。
一家の女たちのおかげで、口は利けずとも男の子は今や立派な青年となりました。

ある日、一家はいつものようにテーブルを囲んで食事をはじめました。
すると、青年はテーブルの端の水の入ったピッチャーを指し、

「・・・そこの水を取ってくれない?」

生まれて初めて彼は言葉を発したのです。
この時の一家の喜びようは、もうそれは女たちは天にも昇るようでした。

姉の一人が青年に尋ねました。

「なんてすばらしいんでしょう。16年もたっておまえが話せるようになるなんて!
奇跡が起こったのか、まったく一体どういうことなの?」

青年は答えます。

「んー?だって、生まれてからずっとあんなに至れり尽せりだからさ。
ほんと、これまでに話さなきゃいけなかったことってなかっただけなんだよねー」